九州美食研究ブログ

九州地方の郷土料理を食べ歩いたり、調理、研究して紹介するブログです!福岡を中心としたグルメの食べ歩き記録の記事も載せていますので、そちらも是非!

魅惑の料理 「りゅうきゅう」の正体

 皆さま「りゅうきゅう」って知っていますか?

大分県出身の方なら皆ご存知、しかし一度大分県を出ると隣の県でもあまり知られていないという謎の料理「りゅうきゅう」。「りゅうきゅう」は非常に美味で、ご家庭でも簡単に作れる魅惑の郷土料理なのです。皆さまにも広く「りゅうきゅう」の魅力を知って楽しんで頂きたいので、今回紹介させて頂きたいと思います!

 

 ~「りゅうきゅう」とは~

「りゅうきゅう」とは簡単に言うと大分の郷土料理で魚の切り身の‘‘漬け‘‘のようなものです。

しかし何故、大分県で沖縄のような「りゅうきゅう」という名前がついているのでしょうか?これは諸説あるのですが、良く分かっていないそうです。

元々は漁師めしで、沖縄の漁師から伝わった説、魚の切り身の端っこの部分を使う事から日本の南端にあるりゅうきゅうの名前が付いた説、胡麻を使用することから利休和えがなまった説など様々あります。

(私も大分県に住んでいた時に、色んな人に聞いたり調べてみましたが皆回答はあやふやでした。)

個人的には沖縄を指す「琉球」に何らかの関りがあるのではないかとは思っていますが。

大分県では地域にもよりますが家庭料理として親しまれており、そのレシピには決まったものはありません。下記は簡単なレシピです。

 

・醤油:みりん=2:1

・ゴマ

 

これを魚の切れ端に数分和えるだけです。

ここに酒を入れたり、ごま油を入れたり、ショウガなどの薬味を和えるパターンもあります。私の佐賀関の友人の実家では味噌を入れたりもするそうです。

魚もアジやサバ、ブリなど生食用である必要はありますが特定の魚をつかうという事でもありません。大分の国東市に住んでいた頃は、スーパーに「りゅうきゅう」という名の色んな魚の切れ端セットが売っていたりしました。

また、50年ほど前は「りゅうきゅう」のことを「お茶漬け」と呼んだりしていたそうです。これは「りゅうきゅう」をお茶漬けにして家庭では食べていたということでしょう。

地域や時期によってさまざまな変化をする「りゅうきゅう」を定義するのは難しいのかもしれません。

 ※冷蔵庫のない時代は保存の為に、漬け込んでいたという話も聞きますし、実際漬け込んで提供しているお店も多くあります※

 

~類似料理との違い~

「りゅうきゅう」の話をする時に「それつまり漬けの事?」とよく聞かれますが、同じものなのでしょうか。

大まかには同じ。

です。

江戸前のお寿司屋さんなどに行くと、よくマグロの漬け等が置いておりますよね。勿論お店によって味の相違はあるのでしょうが、大まかに違いを挙げると

 

①基本的には和えるだけで、漬け込むわけではない。

②「りゅうきゅう」はみりんの割合が多く、比較的甘い味付けになる。

③「りゅうきゅう」のたれは昆布などの出汁の様なものは入れない。

 ※検証していませんので、主観です。今後も調査していきます※

 

という点になります。

有名どころでは福岡県の「ゴマサバ」なども非常によく似た料理ではありますが、「ゴマサバ」の方は読んで字のごとくサバを使用すること、とショウガなどの薬味を強く使用する印象がありますが、タレ自体に明確な違いを見つけることは出来ませんでした。

 

 

~実際に「りゅうきゅう」を作ってみる~ 

私も色々なレシピで作ってみましたが、今回はショウガやニンニク等の薬味を使用しないとってもシンプルな下記のレシピで「りゅうきゅう」作ってみました。まずはレシピから

①魚に塩を振り、10分ほどおいて、表面の水分をふき取る

※臭みを抜く為と、水分を抜いたほうが味の通りも良くなります

②適当に切った魚と下記を合わせて10分ほど置く

・醤油:みりん=2:1

・すりゴマ(orいりゴマ) 適量

・ごま油 適量

③ネギとすりゴマ(いりゴマ)をちらして完成

※分量は切り身の量によって変わりますので、そんなに細かく気にしなくて大丈夫です※

 ※甘いのがお好きな方は、醤油とみりんを1:1にしても良いと思います※

以上!簡単です。

魚は何でも良いですが刺身用を使用することと、生食用と言っても血が回ってしまっているものや、臭いが強いものを使うと美味しくないので避けること、こちらに気を付ければ美味しく出来ます。

※「りゅうきゅう」は冷蔵庫で2日程度は持ちますが、魚の種類や状態によっても変わりますので梅雨や夏の間は特にお気をつけください※ 

 

 

ではどんな魚を使用するのが良いのでしょうか。

飲食店でよく見るのは、アジ、ブリ、タイ、サバなどですね。マグロが実は「りゅうきゅう」の元祖ではないかという意見も見つけました。近年ではサーモンなどが入っているものもあります。

郷土料理という点を踏まえると九州名産の青魚、手に入りやすいアジなどが良いのではないでしょうか。

大分県保戸島では、明治中期程からマグロの漁業が盛んに行われている事から、マグロ原始説も頷けるところはあります※

 

今回はスーパーで見つけてきた(特売していた)、ブリ、サーモン、キハダマグロ、カツオで作ってみました。

 

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ブリ、歯ごたえがあって美味しいです。

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サーモンハラス、脂がちょっとくどいです。

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キハダマグロ。刺身よりも美味しくなります。

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カツオ。今回は一番美味でした。

ブリやカツオは新鮮なものでないとショウガ等を加えても臭くてダメでした。できるだけ鮮度の良いものを選ぶのがコツですね。ゴマはすりゴマを使うとよりコクが出ますが、好みで使い分けると良いでしょう。また、和えた汁(タレ)は魚の臭みを持っているそうなので和えた後は捨てた方が良いとのレシピも見つけましたが、魚にもよります。個人的には丼やお茶漬けにするのならタレは使用すると良いと思います。

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3日漬けたマグロはトロトロになります。

 

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卵黄を落してお店っぽく。


またお茶漬けにアレンジしたりと、色々楽しめます。「りゅうきゅう」調べていく過程で大分県やほかの地域にも「りゅうきゅう」に似た郷土料理が様々にあることが分かりました。そちらも作ってみたりしながら今後も色んな魚や、レシピ、アレンジをしながら研究を重ねてみたいと思いますので、是非皆さんもお試しください!

 

 

~疑問と今後の考察~

…と、ここまで「りゅうきゅう」に関して書いてきましたが、何点か気になる事が出てきました。

  1. 「りゅうきゅう」の名前の由来は?
  2. 「りゅうきゅう」はいつから大分で食べられているのか
  3. 類似郷土料理との接点は?

 まず、1.に関しては「りゅうきゅう」を愛する者たちの永遠の命題だと思います。今後大分の歴史や他の郷土料理を研究していくことで自分なりの答えを出そうと思っています。

次に、2.に関して「りゅうきゅう」は果たしていつ頃から、大分県民に食されていたのか、この答えを探ることで「りゅうきゅう」への深い理解が得られそうです。

そして最後に3.に関して、今回「りゅうきゅう」を調べていくうちに大分県にいくつかの類似の郷土料理を見つけました。杵築の「うれしの」、佐伯の「あつめし」、津久見の「ひゅうが丼」などです。これらと「りゅうきゅう」が同じものであると言い切っている方もおられましたが、果たしてどうなのでしょうか。一つ一つ実際に作ったり調べたりしながら、理解を深めていきたいなと考えています!